まえがきで、
【「孫子」を一言で言えば、「戦わずして勝つ」である】と主張する。
【「戦わずして勝つ」ためには戦ったら勝つだけの実力を持ち、それをいつでも効果的に発動できる準備を十分にしておかなければならない】。
【第五篇に「戦は、正を以って合し奇を以って勝つ」とあり、正の努力の必要性を併せ説いているのを見落としてはならない】といい、
【多くの人が「兵法とは策なり」と誤解するのは「孫子」の欠点であろう】といっている。勝つだけの実力を持っていなければ、いくら策をめぐらせても勝つことは覚束ない、といっているのである。
また、
【兵書には「敵」という言葉が良く出て来、これを経営に利用される方は、この「敵」を商売仇や競争相手と置きかえられることが多い。しかし、、これでは兵書の一番よいところを逃してしまうおそれがある。どうか「敵」とは「困難な仕事」と、思っていただきたい】といっている。
また、
【われわれがその中から学びたいのは組織力を効果的に発揮することであり、私は、兵法の真髄は「情理をつくした統御と指揮すなわち、合理的な判断、勇気ある決心、不屈の実行力およびかつ敵と戦うオン・ザ・ジョブ・トレーニングの人間育成にある」と信じている】という。
第一篇では経営孫子として、孫子を経営に利用する方法を具体的に述べている。
私が一番得心がいったのは、
【上下欲を同じくするものは勝つ】である。労働者の給料を低く抑えることに経営の主眼を置く経営者がいる。これでは、好景気不景気を問わず、労働者が効果的に働くことはできないであろう。それを考えると、会社の収入が増えたらそれを即座に給料という形で反映させる、そういうシステムがない限り、労働者が効果的に働くことは期待できない。
孫子の主張を組織が効率的に動くためと考えているなら、この
【上下欲を同じくするものは勝つ】を導入すべきであると思う。
第二編から第三篇までは孫子の注解を行っている。
付録第一ではマキャベリと孫子の比較、付録第二では楠木兵法における孫子の応用例、付録第三では孫臏と孫子との比較、を行っている。
たんに孫子の注解を述べるにとどまらず、具体的にどのように実践すべきか、どのように実践されていたか、を説いているところが、この本の読みやすいところである。
参考文献:
『兵法孫子』 大橋武夫 PHP文庫作成:09年03月23日